ボールを投げると肘の内側が痛い」「練習後に肘がズキズキする」「休むと痛みがなくなるのに、投げ始めるとまた痛くなる」

このような症状は、野球肘の可能性があります。

野球肘とは、繰り返す投球によって肘の骨や軟骨、靱帯、筋肉などに負担がかかり、痛みが生じるスポーツ障害の総称です。

特に肘の内側の痛みは、少年野球から高校生、成人まで幅広い年代で見られます。ただし、成長期の選手と成人では、痛みの原因となる組織が異なることがあります。

また、肘が痛いからといって、肘だけに問題があるとは限りません。肩や胸郭、股関節などの動きが制限され、肘に負担が集中している場合もあります。

この記事では、野球肘で内側が痛くなる原因や症状の特徴、痛みが出たときの対処法についてお伝えします。

野球肘で肘の内側が痛くなる原因

繰り返す投球で肘の内側に負担がかかる

投球動作では、腕を振る際に肘の内側を引っ張るような力がかかります。

この力に対して、肘の内側にある靱帯や筋肉、骨などが関節を支えています。

投球数が多い、休養が不足しているといった状態が続くと、同じ部分に繰り返し負担がかかり、痛みにつながることがあります。

特に成長期は骨の成長部分がまだ十分に成熟していないため、投球による負担に注意が必要です。

肩・胸郭・股関節の動きが関係する

ボールを投げる動作は、腕だけで行うものではありません。

下半身から体幹、肩、肘、手へと力を伝える全身運動です。

例えば、股関節の回旋が制限されていたり、胸郭が十分に動かなかったりすると、身体全体でスムーズに力を伝えにくくなる場合があります。

その結果、肩や肘に余分な負担がかかる可能性があります。

野球肘では肘の状態を確認することが基本ですが、身体全体の動きにも目を向ける必要があります。

身体の動きを補う代償動作が起こることもある

身体のある部分が十分に動かないと、別の部分がその動きを補おうとすることがあります。これを「代償動作」といいます。

例えば、股関節や胸郭の動きが制限されていると、その不足を肩や腕の動きで補う場合があります。

こうした動作が繰り返されることで、肘への負担が増える可能性があります。

ただし、すべての野球肘が代償動作によって起こるわけではありません。実際の身体の状態を確認して判断することが大切です。

野球肘の内側に起こる主な障害

肘の内側が痛む場合、年齢や身体の状態によって、いくつかの障害が考えられます。

成長期に多い内側上顆骨端障害

少年野球で注意したいのが、上腕骨内側上顆の成長部分に起こる障害です。

成長期の骨には、骨が伸びるための軟骨部分があります。この部分に投球による牽引力が繰り返しかかると、炎症や損傷が生じることがあります。

肘の内側を押すと痛い、投球すると痛むといった症状が代表的です。

成長期の肘の痛みは、単なる筋肉痛と自己判断せず、早めに整形外科で確認することが重要です。

内側側副靱帯(UCL)損傷

内側側副靱帯は、肘の内側で関節を安定させる重要な靱帯です。

投球によって繰り返し強い負担がかかると、靱帯が傷つくことがあります。

投球時の痛みや力の入りにくさなどが生じ、損傷の程度によっては長期間の投球休止や専門的な治療が必要になる場合があります。

筋肉・腱の障害や尺骨神経の問題

肘の内側には、手首や指を動かす筋肉の腱も付着しています。

投球によってこれらの組織に負担がかかり、痛みが生じることがあります。

また、肘の内側を通る尺骨神経が刺激されると、小指や薬指にしびれが出る場合もあります。

痛む場所だけで障害を特定することはできないため、症状に応じた検査が必要です。

野球肘で内側が痛いときの対処法

痛みがあるときは投球を中止する

肘の内側に痛みがある場合は、まず投球を中止しましょう。

痛みを我慢して投げ続けると、組織の損傷が進む可能性があります。

特に成長期の選手は、早めの対応が重要です。

無理なストレッチや自己判断での投球再開を避ける

肘が痛いからといって、強く伸ばしたり、痛みを我慢して動かしたりすることはおすすめできません。

また、数日休んで痛みが軽くなっても、すぐに全力投球を再開することは避けましょう。

身体の状態に合わせた対応が必要です。

野球肘の改善には肘だけでなく全身の評価も重要

野球肘では、損傷している組織への対応に加えて、なぜ肘に負担がかかっているのかを確認することも大切です。

徒手検査で関節の可動域や筋力を確認する

当院では、症状名だけで施術内容を決めるのではなく、徒手検査によって身体の状態を確認します。

肘だけでなく、肩関節の可動域や筋力、動かしたときの反応なども評価します。

同じ肘の内側の痛みでも、身体の状態は一人ひとり異なるためです。

股関節・胸郭など全身の動きを確認する

当院では、特に股関節や胸郭の動きを重視しています。

投球動作では、下半身や体幹の動きが肩や肘への負担に関係することがあります。

そのため、動作分析によって身体の連動性を確認し、どこかの動きを別の部分で補っていないかを評価します。

こうした検査結果をもとに、必要な部位への施術や運動指導を検討します。

痛みがなくなっても段階的な投球復帰が必要

痛みがなくなることと、身体の機能が十分に回復することは同じではありません。

休養によって痛みが軽くなっても、関節の可動域や筋力、身体の動きに問題が残っている場合があります。

そのため、痛みの有無だけで投球復帰を判断せず、損傷の回復状態や身体機能を確認することが重要です。

復帰時期は一律には決められません。医師などの専門家と相談しながら、軽い投球から段階的に再開していきます。

野球肘の内側の痛みは原因の確認が大切

野球肘で肘の内側が痛くなる原因には、繰り返す投球負荷による骨や靱帯、筋肉などの障害が考えられます。

また、肩や胸郭、股関節の動きが制限され、肘に負担が集中している場合もあります。

大切なのは、痛みのある肘だけを見るのではなく、身体全体の状態を確認することです。

当院では、徒手検査と動作分析をもとに、一人ひとりの身体の状態に合わせた対応を考えています。

肘の内側の痛みを繰り返している方は、無理に投球を続けず、まず整形外科で必要な検査を受けましょう。そのうえで、肘への負担につながる身体の動きについても確認することをおすすめします。

投稿者プロフィール

奥田 剛
奥田 剛
帝京高校野球部で甲子園に3回出場し、高校日本代表、早稲田大学、社会人野球を経験。自身のケガをきっかけに柔道整復師となり、整形外科勤務では肩・肘を中心に多くの症例に携わる。現在は身体の使い方や動きまで確認し、再発しにくい身体づくりをサポートしている。