野球肩は、投球動作を繰り返すことで肩に痛みが生じる障害の総称です。

野球選手の肩では、正常な投球動作でも、肩関節の内部で腱板などの組織が接触しています。しかし、組織が接触すること自体が痛みの原因になるわけではありません。

重要なのは、投球を繰り返すことで肩関節後方の組織が硬くなり、同じ投球動作でも組織にかかる負担が大きくなることです。

この記事では、野球肩で痛みが発生する仕組みと、インターナルインピンジメントとの関係、痛みを改善するための対処法について解説します。

野球肩はなぜ痛くなるのか?

野球肩の痛みを理解するには、正常な投球動作でも肩関節の内部で組織同士が接触していることを知る必要があります。

投球時に腕を後ろへ引くと、肩関節が大きく外旋し、腱板の関節面側と肩甲骨の関節窩後上方が接触します。

この接触は正常な肩でも起こる現象であり、接触そのものが異常というわけではありません。

正常な投球動作でも肩の内部では組織が接触している

ボールを投げる際、腕を後ろへ引く動作では肩関節が大きく外旋します。

このとき、肩関節の内部では腱板と関節窩が接触しています。

正常な状態では接触面積が小さく、接触による圧力も比較的小さいため、組織への負担が少ないと考えます。

つまり、組織が接触すること自体が問題なのではなく、接触によってどれだけの負担がかかるかが重要なのです。

投球を繰り返すと肩関節後方の組織が硬くなる

野球選手は、練習や試合で何度も投球動作を繰り返します。

投球動作では、肩関節の後方にある筋肉や関節包などの組織に負担がかかります。

こうした負担が繰り返されることで、肩関節後方の組織が硬くなる場合があります。

後方組織が硬くなると、肩関節の動きが制限され、投球時の関節内部の動きにも変化が生じる可能性があります。

後方組織が硬くなると接触面積と圧力が変化する

肩関節後方の組織が硬くなると、腕を後ろへ引いたときの肩関節内部の接触状態が変化します。

後方組織が硬くなることで、正常な状態と比べて腱板と関節窩の接触面積が大きくなり、接触圧力も増加すると考えます。

つまり、同じ投球動作をしていても、肩関節内部の組織にかかる負担が以前より大きくなるということです。

ただし、接触面積と圧力が必ず両方増加することは、医学的に一律に確認されたものではありません。

組織への負担が増えることで痛みが発生する

肩関節内部で接触による負担が大きくなると、腱板などの組織に繰り返しストレスが加わります。

その結果、組織に微細な損傷が生じ、投球時の痛みにつながることがあります。

最初は強く投げたときだけ痛みが出ていても、負担が続くことで、軽い投球でも痛みが現れる場合があります。

このように、野球肩の痛みは、単に投球回数が多いことだけではなく、繰り返しの投球によって肩関節の状態が変化し、組織への負担が増えることが関係していると考えられます。

野球肩とインターナルインピンジメントの関係

インターナルインピンジメントとは、肩関節を大きく外転・外旋したときに、腱板の関節面側と関節窩後上方が接触する現象です。

野球選手では、投球時に腕を後ろへ引く動作で、この接触が繰り返されます。

インターナルインピンジメントが起こる仕組み

投球動作では、腕を後ろへ引くレイトコッキング期に肩関節が大きく外旋します。

このとき、腱板と関節窩が接触します。

正常な状態では接触しても問題が生じない場合がありますが、後方組織が硬くなることで関節内部の接触状態が変化し、負担が増える可能性があります。

その結果、腱板などの組織に損傷が生じ、痛みにつながることがあります。

インターナルインピンジメントと腱板損傷

腱板は、肩関節を安定させる筋肉と腱から構成される組織です。

インターナルインピンジメントでは、腱板の関節面側に繰り返し負担が加わり、部分損傷が生じる場合があります。

特に、棘上筋や棘下筋の腱に損傷がみられることがあります。

ただし、インターナルインピンジメントが疑われても、必ず腱板が損傷しているわけではありません。

野球肩の予防には肩の後方を硬くしないことが重要

正常な投球動作でも、肩関節の内部では腱板と関節窩が接触しています。しかし、正常な状態では接触面積と圧力が小さく、組織への負担も比較的小さいと考えられます。

問題は、投球を繰り返すことで肩関節後方の組織が硬くなることです。

肩の後方が硬くなると、同じ投球動作でも関節内部の接触状態が変化し、組織にかかる負担が大きくなる可能性があります。その結果、腱板などが損傷し、痛みにつながることがあります。

つまり、野球肩の予防と改善で重要なのは、肩関節後方の組織を硬くしないことです。

投球後の適切なケアや肩関節の柔軟性の維持を心がけ、後方組織が硬くなっている場合には、その状態に応じた改善を行うことが大切です。

痛みが出てから対処するだけでなく、日頃から肩の後方を硬くしないことが、野球肩の予防につながります。

投稿者プロフィール

奥田 剛
奥田 剛
帝京高校野球部で甲子園に3回出場し、高校日本代表、早稲田大学、社会人野球を経験。自身のケガをきっかけに柔道整復師となり、整形外科勤務では肩・肘を中心に多くの症例に携わる。現在は身体の使い方や動きまで確認し、再発しにくい身体づくりをサポートしている。