野球肩の痛みがあり、投球を休んでいるにもかかわらず、なかなか状態が変わらないと不安になる方は少なくありません。肩を休ませることは大切ですが、可動域の低下や身体の使い方に問題が残っていると、ノースローだけでは十分に負担が減らない場合があります。痛みの場所や出やすい動作を整理し、肩関節だけでなく肩甲骨、体幹、下半身まで確認することが重要です。

野球肩がノースローでも治らない場合は、肩甲骨や体幹・下肢の動きが低下している場合や肩後方の柔軟性の回復が不十分なまま練習を再開しているなど、投球以外の要因が関係している可能性があります。

野球肩がノースローでも治らないのはなぜ?

投球を休んでも肩の痛みが残る理由は、休養だけでは負担の原因まで見直せていない場合があるためです。野球肩は、投球回数の多さだけで起こるとは限りません。

投球動作では、肩関節だけでなく、肩甲骨、胸郭、背骨、股関節、下半身が連動します。どこかの動きが低下すると、腕を振る際に肩へ負担が集中しやすくなります。

ノースローは、肩を回復させるための一つの方法です。ただし、休む期間を設けるだけではなく、痛みを長引かせている動作や身体の状態を確認する必要があります。

まず見直したい肩の痛みを長引かせる3つの要因

肩の痛みが長引いている場合は、投球以外の負担、身体の連動性、投球再開の時期を見直すことが大切です。単に休養期間を延ばすだけでは、同じ状態を繰り返す可能性があります。

投球を休んでも肩に負担がかかる動作を続けている

投球をしていなくても、腕を高く上げる動作や重い物を持つ動作を繰り返すと、肩への負担が残ることがあります。通学時に重いバッグを片側だけで持つことや、スマートフォンを長時間操作する姿勢も注意が必要です。

横向きで寝た際に痛い肩を下にしている場合や、肘を浮かせた状態で勉強を続けている場合も、肩周辺が緊張しやすくなります。ノースロー中は、練習以外の生活場面も含めて負担を確認しましょう。

動作中に痛みが強くなる場合は、無理に繰り返さないことが基本です。どの姿勢や動作で痛むのかを記録しておくと、身体の状態を確認する際にも役立ちます。

肩関節だけでなく肩甲骨や体幹の動きが低下している

投球時に肩を大きく動かすためには、肩甲骨や胸郭が滑らかに動く必要があります。肩甲骨が十分に動かないと、肩関節だけで腕を上げる形になり、局所的な負担が増えやすくなります。

さらに、体幹が回りにくい、股関節に体重を乗せにくい、下半身から力を伝えにくいといった状態も、肩への負担につながります。投球は腕だけで行う動作ではありません。

肩周辺だけをストレッチしても変化が乏しい場合は、背中や胸郭、体幹、股関節の動きも確認する必要があります。ただし、痛みを我慢して強く伸ばすことは避けましょう。

痛みが減った段階で投球を再開している

安静時の痛みが減っただけで投球を再開すると、肩に必要な筋力や動きが戻っておらず、再び痛みが出ることがあります。痛みがないことと、投球に耐えられる状態であることは同じではありません。

腕を上げる、外側へひねる、肩甲骨を動かすといった基本動作に問題がないかを確認することが大切です。軽い動作で違和感がある場合は、強い投球へ進む段階ではない可能性があります。

投球再開後も、いきなり通常の距離や球数に戻すのではなく、近い距離から軽い強度で始めます。投球中だけでなく、投球後や翌日に痛みが出ないかも確認しましょう。

野球肩で確認したい痛みの場所と出やすい動き

痛みの場所と出やすい動きを整理すると、どの動作で肩に負担がかかっているかを把握しやすくなります。ただし、痛む場所だけで原因や状態を断定することはできません。

腕を上げたときに肩の前側が痛む

腕を前方や横から上げた際に肩の前側が痛む場合は、肩関節の前方に負担がかかっている可能性があります。腕を上げる角度によって痛みが変わるかも確認してください。

肩が前に出た姿勢や、胸の筋肉が緊張した状態では、肩甲骨が動きにくくなることがあります。その結果、腕を上げる際に肩の前側へ負担が集中しやすくなります。

痛みがある状態で、腕を勢いよく回したり、強く後方へ伸ばしたりすることは避けましょう。動かせる範囲内で、痛みが増えないかを確認することが大切です。

投球動作の途中で肩の後ろ側が痛む

腕を後ろへ引く場面や、ボールを離す前後で肩の後ろ側が痛む場合は、肩後方の筋肉や関節周辺に負担がかかっている可能性があります。

胸郭や体幹の回旋が少ないと、腕だけが後方へ引かれやすくなります。肩の後上方で骨頭と関節窩が衝突し、投球時の痛みや違和感につながることがあります。

肩の後ろを伸ばすストレッチは非常に有効ですが、ストレッチ後に痛みが増える場合は中止し、身体の状態を確認してもらいましょう。

投げ終わりに肩全体が重くなる

投球直後や練習後に肩全体が重くなる場合は、肩周辺の筋肉が疲労し、腕を支えにくくなっている可能性があります。痛みが強くなくても、毎回同じ重さが出る場合は注意が必要です。

球数が多い、連投している、休憩が少ないといった練習習慣も関係します。フォームが崩れた状態で投げ続けると、肩周辺の負担はさらに増えやすくなります。

重さが翌日まで残る場合や、投球のたびに強くなる場合は、球数や練習強度を見直しましょう。無理を重ねず、回復状況を確認することが重要です。

ノースロー中に行いたい肩の状態を整える取り組み

ノースロー中は、ただ投げないだけでなく、痛みの変化を確認しながら身体の動きを整える期間として活用します。痛みを我慢した筋力トレーニングやストレッチは避けてください。
次に、肩甲骨や胸郭を無理のない範囲で動かします。背中を丸めた姿勢が続かないように注意し、胸を張りすぎず、呼吸しやすい姿勢を意識しましょう。

下半身や体幹の動きも重要です。股関節の内外旋、身体を左右にひねる、片脚で安定して立つといった動きに左右差がないかを確認します。

運動後に痛みが強くなる場合は、内容や負荷が合っていない可能性があります。セルフケアだけで判断せず、必要に応じて医療機関や身体の動作を確認できる専門家へ相談してください。

投球再開はいつから?確認したい判断基準

投球再開は、安静時の痛みが減った時点ではなく、基本的な肩の動きで痛みが出ないことを確認してから検討します。具体的な時期には個人差があります。

確認したい主な項目は次のとおりです。

  • 日常生活で肩の痛みや違和感がほとんどない
  • 腕を上げる、回す、ひねる動作で痛みが出ない
  • 肩や肩甲骨の動きに大きな左右差がない
  • 軽い運動後や翌日に痛みが増えない
  • 医療機関から運動制限を受けている場合は許可が出ている

投球を始める際は、近距離での軽いキャッチボールから進めます。球数、距離、強度を一度に増やさず、どれか一つずつ段階的に調整してください。

投球中に痛みが出なくても、数時間後や翌日に症状が出ることがあります。投げた直後だけで判断せず、時間が経過した後の状態も記録しましょう。

野球肩を繰り返しやすい投球フォームと練習習慣

野球肩を繰り返しやすい人は、肩に負担が集中するフォームや、回復が追いつかない練習習慣が残っている場合があります。

下半身を十分に使えず、上半身だけで投げるフォームでは、肩や肘への負担が増えやすくなります。身体の開きが早い、踏み出した脚が安定しない、体幹が前へ流れるといった動きも確認が必要です。

疲れている状態で投げ続けると、最初は問題のなかったフォームも徐々に崩れます。球速の低下、コントロールの乱れ、腕の振りにくさが出た場合は、球数に達していなくても休む判断が大切です。

連日の投球や、全力投球ばかりを繰り返す練習も見直しましょう。練習量だけでなく、睡眠、食事、休養を含めて回復できる環境を整える必要があります。

フォームは見た目だけで判断するのではなく、肩、体幹、股関節の動きと合わせて確認することが重要です。体のコンディションを改善することでフォームも修正されることが少なくありません。フォームの乱れはコンディションの低下と考えてください。

ノースローを続けても痛みが残るときに確認したいこと

ノースローを続けても痛みが残る場合は、休養期間をさらに延ばす前に、痛みが出る動作や身体の状態を整理しましょう。

まず確認したいのは、日常生活でも痛むのか、特定の角度だけで痛むのか、夜間や安静時にも痛むのかという点です。痛みが強くなっている、腕に力が入りにくい、しびれがある、肩が腫れている場合は、医療機関での確認を優先してください。

外傷後に強い痛みが続いている場合や、腕をほとんど上げられない場合も、自己判断で運動を再開しないことが大切です。

大きな異常が確認されていないものの痛みが続く場合は、肩関節だけでなく、肩甲骨、胸郭、体幹、股関節のコンディションが低下しています。このコンディションが改善されないまま投球を再開することで痛みは再発します。これがノースローでも治らない要因の一つです。治療院などでは、姿勢、関節の動き、筋肉の緊張、身体の連動性を確認できる場合があります。

最初に行うべきことは、痛みを我慢して投げることではなく、いつ、どの動きで、どこが痛むのかを整理することです。そのうえで、日常動作や練習量を見直し、身体の状態に合わせて段階的な投球再開を検討しましょう。

投稿者プロフィール

奥田 剛
奥田 剛
帝京高校野球部で甲子園に3回出場し、高校日本代表、早稲田大学、社会人野球を経験。自身のケガをきっかけに柔道整復師となり、整形外科勤務では肩・肘を中心に多くの症例に携わる。現在は身体の使い方や動きまで確認し、再発しにくい身体づくりをサポートしています。